STORY

vol.05

俣野千秋

Cafe Ring
代表・
クリエイティブディレクター

OL生活を経て、29歳でコンピュータのソフトウェア制作会社を起業後、35歳でジュエリーの仕事に就いた俣野千秋さん。大阪のオフィスビルの7坪のサロンから始めて今では銀座の並木通りにある本店の他、自身のブランド「Cafe Ring」を全国的に展開しています。

今や日本を代表するプラチナジュエリーブランドとして「Cafe Ring」を確立させた根底には、「女性が仕事と家庭を両立しながら活躍する時代」において、真に働きやすい会社を作りたいという思いがありました。

成人を迎えられた娘さんの母でもあり、今年から住まいを京都に移し、夫と共に東京との二拠点生活を始められた俣野さんに、人生のさまざまなタイミングに対して、自分らしい"温度感"で臨む秘訣をお伺いしました。

PROFILE

俣野千秋 CHIAKI MATANO

俣野千秋(本名・青木千秋)。Cafe Ring 代表、クリエイティブディレクター。著書に『プラチナモチベーション」(アーティストハウス)、『夢をかなえるスケッチブック」(ダイヤモンド社)。3枚のオリジナルコンピレーションアルバム『カフェリング』『プラチナ』『プラチナモチベーション』(ビクターエンタテインメント)をプロデュースした他、オリジナル「プラチナティー」や、新宿伊勢丹にて限定発売され完売した「ダイヤモンドキャンディ」も手掛ける。

2008年には、20万人の学生があこがれる「経営者アワード」で6位にランクイン。ジュエリープロデューサー、起業家として、ファッション誌・経済誌・新聞・TVなどで取材を多数受け、そのしなやかな生き方が注目を集めている。

人生で大切なことは"気分"で選ばない

いわゆる"普通の会社員"から29歳で初の起業。バイタリティを感じるキャリアなのですが、昔から経営者志向はあったのでしょうか?

俣野

最初から経営者になろうと強く思っていたわけではありません。ただ、まだ人生についてよく分かっていない若い自分なりに昔から、大金持ちになりたいとは思わないけれど、経済面や健康面で苦しんだりするのは嫌だなぁと感じていました。当時は、女性は社会で活躍するというより、企業で少しだけ働いた後に、社会的地位や経済力のある男性と結婚するのがいいとされる空気があったのです。

でも私は、そういう結婚相手を探すよりも、自分が自立して経済力を身に付ける方が、理想とするライフスタイルを叶えられると考えました。 20代前半の頃、時代の流れは、松田聖子さんがアイドル絶頂期に結婚、出産を経て、ママドルとして活躍していて、将来は女性が仕事と子育てを両立することが一般的になるのではないか、という機運もありました。しかし、新卒で入社した会社は大好きでしたが、社内の先輩の女性社員は30歳前後で退職するのが一般的。女性がずっと働き続けることが歓迎される社風ではありませんでした。

そして20代後半、仕事と子育てを両立する未来の働き方を考えたときに、転職活動をするか、自分で起業するか、という2つの選択肢がありました。

なぜ転職を選ばなかったのでしょうか?

俣野

望むような労働環境の企業に転職するよりも、自分で環境をつくる方が確実だと思ったのです。理想とする会社に採用されるほどには、自分にスキルがないという判断もありました。

一方で、前職では、採用、教育、商品開発、企画、マネージメントなど、経理以外のことは一通り任せられていたこともあり、経営のノウハウも学ベるフランチャイズ式であれば起業も現実的かと感じ、そのかたちでソフトウェア事業の経営を始めました。

様々な選択肢に対して、とても冷静に判断されているという印象があります。

俣野

人生は常に選択の連続ですが、自分がどうなっていきたいか、どうしたいかを明確にしておけば、選択をするときに、なりたい方向に近いものを選択していけます。反対に、それが分かっていないとなんとなくの気分で選んでしまう。

気分で選んだものと、こうなりたいという方向性に沿って選んだ答えは違ってくるものです。自覚して選択していくと、なりたい自分、やりたい仕事、得たい信用や評価に近づけるといった実感があります。

主体的なあり方ですね。

俣野

でも、いつでも完璧な選択をした方がいいというわけではないですよ。要所要所で頑張ればいいのであって、全部をまともに頑張らなくていいと思います。私も以前は100点満点を目指して、色んなことを詰め込み過ぎていた時期がありました。でも、自分の不得意なことを頑張っても、後々疲れが出たり、歪みが生じたりしてしまいます。

それよりは、何か1つでもいいから自分の得意なことを理解し伸ばして、自信を積み上げていく方がいい。

例えば、気配りができる、字をきれいにかける、花を上手に生けられるなど、パーソナル面でもスキル面でも、部分点でいいから自分の得意なことを自分で認めてあげると気持ちが楽になるのではないでしょうか。たくさんお酒を飲める、カラオケの十八番がすごい!なんてことでもいいと思います。

「ご機嫌さま」で生きるコツ

すべてを完璧にしようとするのではなく、自分の人生の目標に沿って、優先順位をつけることが大事なのですね。

俣野

働きながらの子育てにおいても、「この時期は子供優先」、と時には決める勇気も必要だと思います。子供優先にしてしまうと仕事をできない日があるかもしれませんが、そこはフル出勤できる日にいい仕事をしてカバーすればいいと考える。そうやって無理をし過ぎずにバランスを取っていると、徐々に周りにその努力が伝わったり、不思議と子供が体調を崩さなくなっていくのです。

母親の精神状態やストレスはそのまま子供に影響する気がしているので、自分のメンタルを整えていくのが何より良い子育てになるのだと考えています。

お仕事においても、プライベートにおいても、とてもしなやかに過ごされている感じがあります。俣野さんが我を忘れて怒る、なんてことはあるのでしょうか?

俣野

マリア様ではないので、怒ることももちろんあります(笑)。 自分は短気だと感じることもありますが、できれば、あまり怒りたくありません。怒って問題が解決するのであれば良いのですが、そういう訳でもないですし、つい文句など言ってしまうと、そういう自分が嫌になってしまうから。

仮に怒ってしまったとしても「それはやっちゃったな」と流します。 できれば、いつも「ご機嫌さん」でいたいのです。自分が心地よい状態にいられるよう、常にバランスをとるというあり方が、私にとってのゆふてん(温度感)なのかもしれません。

心地良さの追求や、様々なシーンを意識したバランス感覚は、「Cafe Ring」のプラチナジュエリーにも通じる感覚があります。

俣野

自分の生き方がそうであるから、作品づくりもおのずとそうなっていきました。

例えば、デザインが気に入って購入したものでも、付けていると肩が凝ったり、ストッキングを履くときに指が当たってこすれてしまうようなリングだとあまり付けなくなってしまいます。それではあまりにもったいない。デザインはもちろん、快適に愛用して頂けるように作りたいのです。

そういったことを意識して仕上げをすると、ひと手間、ふた手間かかりますが、磨きは2回でいいところを、3回するなどして、微調整は惜しまず行い、バランスを重視して作品を作っています。

お店づくりも同じで、デザインや品質のいい商品、素敵なショップ空間、センスのあるアドバイザー、この3つの細やかなバランスを大事にしています。

「自然、美術品、美味しいもの」が幸せの鉄板

働く女性として、母として、妻として、美しいものを愛する1人の女性として、心地良いバランスを追求されてきました。忙しさが極まっているように思える世の中で、上手にバランスをとるにはどのような工夫をしたらよいのでしょうか。

俣野

いきなり極端に理想を追求するとそれはそれで偏りが出ます。日々の小さいところを意識して、快適に楽しみながら暮らしていくというそれぞれのマインドも重要なのではないでしょうか? 心身の健康を害してから自分の状況に気がつくのではなく、その手前で調整していく。風邪の予防と同じです。

お金をたくさんかけなくても、おいしいお茶で一息ついたり、自分の好きな香りの石鹸で手を洗うだけでも、心がリフレッシュしたり、豊かな気持ちになったりします。そういう"間"が大事だと思うのです。ひと手間、アクションは必要になってくるので確かに面倒でもあるけれど、自分を快適な環境におけるよう調整することは自分にしかできないこと。だったら、できる限り楽しみながらできたらいいですよね。

個人的には、間を作るために仕事でもプライベートでも、特に「自然、美術品、美味しいもの」を意識しています。夫と喧嘩して気まずい空気になっても、「ごめんね」の代わりに、美味しいお茶を淹れたり、お菓子を分け合ったりすると、気持ちが伝わって仲直りできたりもします。

最後に、同時代を生きる女性たちにメッセージをお願いします。

俣野

人生で辛いことに直面したとき、「こんなことがいつまで続くんだろう」と渦中のときは思います。でも、それがずっと続くなんてことはありません。子育てもしんどくて堪らないのはある時期だけで、必ず終わるときや人生の節目が来ます。

時間が解決するだけでなく、自分が成長することで問題を解決できるようになっていた・・・、なんてこともあるかもしれません。楽しいことも嫌なことも含め、自分の人生は前に進んでいる、と考えればいいのではないでしょうか。

「Cafe Ring」の経営と子育てを両立しながら駆け抜けてきた私も、今年から京都をベースに東京との二拠点生活を始めました。これからは、今までとまた違ったライフスタイルや間を持つことになります。大人になるということは辛さや悩みを含むものですが、どんなときも「今はこういう時期なのか」と楽しみながら乗り切っていきたいですね。

INFORMATION

Cafe Ring
1999年、オフィスビル8階の7坪のサロンで、選りすぐりのたった一粒のダイヤモンドから始まる。「カフェでお茶を愉しむように ジュエリーを心地よく楽しむ」をコンセプトに、現在、直営2店舗(東京 銀座/大阪 中之島)と全国84の取扱店にてブライダル・ファッションジュエリーを展開。代表兼クリエイティブディレクターの俣野千秋が、人生において大切にしているバランスを、ジュエリーにおいても重視し、「クオリティ・美しさ・快適さ」のバランスにこだわって作品を生み出している。
www.cafe-ring.com

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インタビュー・テキスト:皆本類 撮影:串田明緖

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