STORY

vol.04

Yae

歌手

いくつもの困難や危機を乗り越え、自分の生き方を選びとってきた人たち。
「ゆふてん」は人それぞれの場所にあります。

 第4回の登場は、第1回のゲスト、加藤登紀子さんの次女であるYaeさん。
登紀子さんの夫、故・藤本敏夫さんが開いた千葉県・鴨川自然王国に暮らして今年で14年。その地に根を張り、3人の子どもを育てながら、農業と歌手活動を両立するという稀有な人生を生きています。
女優を目指しながら歌手へと移行し、そこからなぜ母親は住まなかった鴨川にたどりついたのか。
心の欲するところに正直に生きる彼女の「ゆふてん」を探ります。

PROFILE

Yae 

2001年6月、ポニーキャニオンのオーガニックな新しい時代に向けての音楽レーベル「Leafage」よりアルバム「new Aeon」でデビュー。
同年11月、 1stマキシシングル「風のみち」を発売。テレビ朝日系の「素敵な宇宙船地球号」のエンディングテーマに抜擢される。
その後、青山円形劇場にて初のシアターコンサートを行い、大成功をおさめる。2011年 にデビュー10周年を迎え、記念コンサート「Yae 10th anniversary concert 」全国ツアーを行う。

現在は、三児の母となり家族と共に千葉県にある自然豊かな「鴨川自然王国」で、農も取り入れたスローライフを送りながら、今までの経験を生かし、ライブ中心に活動し、様々なアート(ダンスや演劇、美術や空間デザインetc...)とのコラボレーションや海外のミュージシャンとの演奏活動も、全世界的に活動を広めていこうとしている。

母・登紀子が拒否した鴨川での生活

お父様の藤本敏夫さんは学生運動のあと投獄、お母様の加藤登紀子さんとは獄中結婚されました。出獄されてからは農業に勤しまれ、「大地を守る会」を設立した後、1981年に鴨川自然王国を開かれました。その時、Yaeさんは6歳ですね。

Yae

はい、私は幼稚園から小学生にあがろうという頃でしたから、父が田舎に住むと聞いていいなあと思いました。「おまえは田舎が欲しいか」と父に聞かれ「欲しい!」と大きく頷いたのを覚えています。アニメの「隣のトトロ」に憧れていましたので(笑)。すると父は、鴨川に連れてきてくれました。東京から車で2時間半はかかりました。

当時、父はまだ他人様のところに仮住まいをさせてもらっていましたが、それはそれは刺激的な体験をさせてもらいました。死んだヘビをつかんで振り回したり、赤とんぼの群に飛び込んだり、カブトムシをたくさん捕まえたり。

母の登紀子は東京に居と事務所を構えていますから「ここには住めない」と。それで、両親はお互いの仕事を尊重した別居生活を始めたのです。でも、休みの度に来ていました。

ここに住むことになるという予感はありましたか。

Yae

そのときはなかったです。私もすっかり東京の人間として成長し、20歳前後の頃は劇団に所属していました。音楽劇『コルチャック先生』に出演したとき、レコード会社の人に声をかけられ、‘99年に歌手デビューすることになったのです。当時はシンガーソングライターというのがはやっていて「どうせなら歌を作ってください」と言われて、必死で作りました(笑)。

その頃に音楽誌でインタビューをさせていただきましたね。新宿御苑の森のなかで撮影をさせてもらったのですが、緑のなかに自然にとけ込んでいて、精霊の化身のような人だなあと思った印象があります。

Yae

ああ、思い出してきました! そうですね、自然のなかにいることが、子ども時代のとても楽しい思い出として体のなかに記憶されているのでしょう。

だからデビューして4年で4枚のアルバムを作ったのですが、主に自然への憧れを歌にもしていました。恋愛の曲を全然作れなくて。

恋が人生を変えた。「ここに未来がある」と直感した

その後すぐ、2004年末には鴨川に移り住まわれていますね。何があったのですか。

Yae

今の夫と付き合い始めたのです。ふと鴨川に帰ってきたら、畑を開墾している若者がいて。「何をやってるんですか、手伝いましょうか」と。畑仕事の後、日があるうちから飲み始めて、お酒と焚き火があるなんとも居心地のよい空間にいるうちに「ここには未来がある」と直感したのです。

もちろん、そのときは結婚など考えていません。彼も東京からきた人で、100何十年経つ古民家に住んでいました。自分たちで自由に壁をぶち抜いたり、囲炉裏を作ったり。当初、彼は「1年くらいここで農業を研修したらどこかへ行きたい」と言っていましたが、結局私が捕まえて、ここに根付かせてしまいました。

翌2005年に結婚、その次の年に、私は出産しました。

お父様はすでに2002年に亡くなっておられたのですね。

Yae

そうなんです。父が亡くなってから2年、鴨川自然王国は誰も活動していない放置状態の期間があったのです。父とは「私がなぜここを選んだのか」を話さずじまいでしたね。父も彼に会っていたら、きっと喜んだと思いますが。

Yaeさんが「ここに未来がある」と思ったは、まったくの直感だったのですね。

Yae

はい。女性は直感で未来を選ぶものだと思います。対して男性は理論で腑に落ちないと、前に進めない。

ただ、男性も外に出ていくことで気づきは得られると思う。だから、彼にも子どもたちにも旅が必要だなと思っています。

野に解き放つ子育てができる

今は11歳、9歳の息子さんと、3歳のお嬢さんを育てていらっしゃいますね。
ここでの子育てはどんなふうですか。

Yae

「静かにしなさい」と言わなくていい、のびのびした子育てです。引っ越してきたときはこの広い場所に世帯数は16件、子どもがいる世帯は4件しかありませんでした。今は移住してきた人たちのネットワークもあり、仲間も増えました。

学校の送り迎えは少し大変ですが。

水もいいし、食べ物は無料でも手に入ります。春は子どもたちを野に解き放って、山菜やたんぽぽを自分の手で摘んで、それを親たちが料理してみんなで食べるという会をやったり。東京からも来られるような子どもたちのスクールはまた再開したいなと思っています。

とても平和ですね。

Yae

戦争が起きないでほしいですね。子どもたちが招集されたら嫌だなと母として正直に思います。

自作に『レッドクロス』という特番ドラマの挿入歌になった『名も知らぬ花のように』という歌があります。このドラマは満州で日本人も中国人も仲良く暮らしていた戦前の話が出てきます。開拓民と結婚したのに、戦争が激しくなると「中国人だから」という理由で虐殺されるというシーンが出てくる。なんともやるせない本当にあった話です。

こういうメッセージを伝えるのは本当に難しいけれど、私は歌っていけたらと思っています。

歌手活動も続けていらっしゃいます。おかあさまのライブでのデュエットなども楽しいですね。

Yae

今年はデビューして16年になるので、オリジナルをしっかり歌い直したいと思っています。母と二人で曲も作りました。

新しい時代の持続可能な「農的幸福」を目指して

Yaeさんとご主人がすすめておられる農業は、今の若い人たちにも触れてみたい農業だという気がします。実際に、アースデーやファーマーズマーケットのようなイベントに訪れる人たちも多いですし。

Yae

はい、2007 年にスタートした「土と平和の祭典」のようなイベントは何万人という人が集まります。今年も10月28、29日に代々木公園で開催します。

亡くなった父は全国を回って「みんなが農的な幸福を」と訴えました。でも、今は「みんなができるかどうか」は無理かもしれない。ただ、自分が楽しそうに農的生活をしていることがまず大事なのではないかと思います。そしてそれをキープしていくことですね。私たちの世代は「農業=かっこいい」という要素も大事です。社会運動ではなく、平和的に楽しく変えていければと思っています。

みんながみんな、田舎に移住しなくてもいい、ということでしょうか。

Yae

そうですね。「農的幸福論」は移住が前提でしたけれど、都会のシェルターのようにここに肩肘張らずにリラックスしに来てもらうだけでもいいと私は思うんです。無理やり農作業をしなくてもいい。何度も来てもらって、自然の恵み、水の美味しさ、そこでできた野菜や米を食べていたら、そこで作ることの大切さ、素晴らしさは、きっと実感としてわかってもらえると思うから。

INFORMATION

Yae Live in 宮崎市
開催日:2017年10月7日(土)
時 間:開場 18:30 開演 19:00
場 所:宮崎市・音楽ホール サル・マンジャー
料 金:前売 3,000円 当日 3,500円
主 催:Yae Project
チケット申し込み:tel.090-1369-7317(竹下)
お問い合わせ:Yae Project tel.03-6273-8437
http://yaenet.com/
Yae Live in 小林市
開催日:2017年10月8日(日)
時 間:開場 16:30 開演 17:00
場 所:宮崎県小林市 オーガニックカフェ イービレッジ
料 金:前売 2,000円 当日2,500円
主 催:Yae Project
チケット申し込み:tel.090-7479-9808(池上)
お問い合わせ:Yae Project tel.03-6273-8437
http://yaenet.com/
鴨川自然王国~秋の大収穫祭~
開催日:2017年11月4日(土)
時 間:11:00
場 所:千葉県鴨川市 鴨川自然王国
料 金:無料
主 催:鴨川自然王国秋の収穫祭実行委員会
お問い合わせ:tel.04-7099-9011
http://www.k-sizenohkoku.com/

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インタビュー・テキスト:森綾 撮影:ヒダキトモコ

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