STORY

vol.03

小早川優子

株式会社
ワークシフト研究所
CEO

欧米の金融企業を経てビジネススクール進学を果たし、3人の子どもを産み育てながら、着々とキャリアを重ねていく女性がいます。小早川優子さんは、自分の経験を踏まえ、さらに女性をエンパワーする企業研修の会社を設立。産休、育休から復帰する女性たちの働き方をサポートしています。

PROFILE

小早川優子 Yuko Kobayakawa

株式会社ワークシフト研究所 代表取締役社長、育休プチMBA副代表。慶応義塾大学ビジネス スクール ケースメソッド教授法研究普及室認定ケースメソッド インストラクター。慶応義塾大学大学院経営管理研究科経営学修士/米国コロンビアビジネススクール留学(MBA)。外資系金融機関に通算13年間勤務。第2子出産後コンサルタント、セミナー講師として独立。専門はダイバーシティ マネジメント、交渉及び女性管理職育成。上場企業、中小企業、ベンチャー企業、省庁や地方自治体などで多数登壇。現在日経DUALにて「働くママのための『交渉学』」を連載中。3児の母。

第3子の妊娠

小早川優子さんは、大学を卒業後、イギリス系、アメリカ系の証券会社で5年働き、1年アメリカに遊学した後、さらに2年弱、アメリカ系の証券会社へ。その後、慶應大学のビジネススクールに入学、その間、コロンビアビジネススクールへの交換留学も果たしました。

小早川

それから、アメリカのカード会社で6年働いて独立しました。最初は個人事業で英語のエッセイ添削サイトを作ったり。不動産が好きだったので、それで仕事も、と考えたのですが、いい物件をとるには不動産会社をやるほうがいい。それで宅建を取ろうと勉強したりもしたのですが、やがて研修会社の友人から『講師をやらないか』と声をかけられたのです。

企業研修は、これまで様々な場所で働いてきた小早川さんにとってそのキャリアを生かせるジャンルでした。ところが――。

小早川

そのタイミングで第3子を妊娠したのです。なので、いったん産休をとりました。そこで、さまざまなことを考えたのです。産休、育休でそれまでやっていた仕事を離れるのは、誰だって不安があります。その時間に何かできることはないだろうか、復帰したときにまた賢く働ける人になっていたいとみんな思うのではないかしら、と。

小早川さんはそこで「ビジネススクール時代に学んだこと」を思い出したのです。

MBAをわかりやすく溶かしてみよう

小早川さんは育休中の女性をエンパワーするべくビジネススクールの先輩が立ち上げた「育休プチMBA」に参画しました。そして、法人からの依頼を機に、その先輩と共に2015年12月、起業しました。

小早川

「育休MBA」とは、本物のビジネススクールでは、1科目で12くらいのケーススタディをするところを、ケーススタディの代わりに経営学の簡単なレクチャーを1つか2つ入れて、ディスカッションしながら学んでもらおうというものです。こちらは育休者対象なので、卒業生は元にいた組織へと復帰していきます。

ディスカッションは20〜30人で1〜2時間程度行います。そして、そこで最も大切なことはディスカッションによる「答え」ではないのだそうです。

小早川

大事なのは、思考のプロセス、なのです。まずワーママ(ワーキングマザー)が、組織にとって面倒くさいものだと思われるのはなぜなのか、を知ってもらうことが大事です。ものすごく単純に言うと、私もそうだったのですが、子どもを産むと『ママ脳』になって、子どもを守るために世間を敵にする傾向があるのです。これは真面目な人に多い傾向で、母としての正解を優先しようとしてしまう。けれども、組織からの目線というのも現実にはあるわけで。まずその『母としての正解』という前提を外してもらう。それから『努力すれば正解を得られるはず』というのも外してもらう。そういう意識改革が目的です。

講習の成果は高く、講義後の参加者の仕事に対する意欲や管理職に対する興味、理解度は、受講前と比べて2倍以上になっているそうです。

第2子誕生の後、夫との関係性を変えた

着々と仕事をし、順風満帆に家族を作ってきたかに見える小早川さんですが、実は大きな危機を乗り越えていました。

それが、第2子の息子さん(第1子はお嬢さん)を産んだ後、ご主人と離婚するほどの大げんかをした事件。(ちなみにそれまで1度も喧嘩したことはありませんでした)

小早川

それまで私は夫のことも息子のように扱っていたのです。でも、男の子が生まれた後、彼の様子がおかしくなった。帰りが遅くなって、以前は好きではなかった飲み会が増えてクラブにも通っていた。家の外で癒しの場所を求めていたのでしょうね。怪しいと思い、初めて彼のケータイのメールを見ました。

ご主人はケータイにロックをかけていなかったそう。それはどこかで小早川さんに「見つけて、止めてもらいたい」という思いもあったのでしょう。

小早川

すぐ「離婚しましょう」と言いました。そうしたら、夫は別れたくないと謝りました。

そのとき小早川さんは、こう考えました。

小早川

まず私は、夫が好きです。だから夫を責めちゃいけないと思ったのです。彼も離婚はしたくない。じゃあ、お互いに関係性を変えましょう、と。これまではあなたの母親のように接してきたけれど、パートナーになりましょう、と。家事や育児も分担してやってもらいます、この離婚届は娘が20歳になるまで保留にします、と。

すると、ご主人はすっかり変わりました。

小早川

今は家事や育児も5割くらいやってくれています。筋肉ムキムキなのですが、ムキムキエプロンで頑張ってくれていますよ(笑)。

小早川さんはこのときの経験も「家庭の交渉学」として、講習のテキストに生かしています。

小早川

2025年には労働人口の激減が深刻な課題になっています。出産した人も育休から仕事に戻るのが当たり前の時代です。そういう需要もあるし、2020年には子どもの教育制度が変わるので、先生を教育して派遣するような事業も進めたい。

まだまだやることは山積みです。

小早川さんの多方面から物事を見る視点、議論の過程を追う包容力は、家庭という組織を育み、子どもを産み育ててきたことも多いに影響しているのでしょう。

INFORMATION

株式会社ワークシフト研究所

http://workshift.co.jp/

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インタビュー・テキスト:森綾 撮影:荻野卓也

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